第三祝福実現のために

神様が与えて下さった第3祝福を実現するための一助として、FXを活用してみようという中年オヤジ食口のブログです

ある女の話(3)

夫の唐突で無神経な願いに、彼女の心は怒りで震えていた。

彼女は、夫の願いに応える気持ちなど毛頭なかったが、自分から夫を

奪い去った女が一体どんな女なのか、またその子がどんな子なのか知りたいとも思った。

そして意を決して、その女に会うことにした。

夫が指定した約束の日は、7月上旬の日曜日であり場所は人気のある遊園地だった。

彼女は初めて会うその女に、あらゆる点で負けられないと思った。

お気に入りの美容院で最高のおめかしをし、最高のブランド品で着飾った。

大きな鏡に映った自分の姿をみて、彼女はすでに勝者が味わう優越感に浸っていた。

約束の時間より10分早くついた彼女は、遊園地入り口の前にあるベンチに腰掛けて、夫と

その女をまっていた。初夏の日差しと優しく吹く風が心地よかった。

ほどなくして夫が一人で現れた。彼女は、

「お一人なの?お相手は?」

と尋ねると、

夫は、

「もう来ている。あれだといって指差した。」

指差すほうには、白いジャガーが止まっていた。

運転手が出てきて、開けたドアからは乳飲み子を抱いた女の姿が見えた。

その瞬間、彼女ははっとした。

『まさか・・・』

近づいてくる女に彼女の気は動転していた。

女は彼女のそばまで寄ってくると、軽く会釈をした後、

I'm glad to see you.

I'm Maria. And this is my son David.

と英国なまりの英語で挨拶してきた。

彼女はとっさに

Hi, thank you.

とちんぷんかんぷんな返答をしてしまった。

女は白人で、背丈は1メートル70センチほどだろうか。

ブロンドのロングヘアーで英国の貴族風の洗練された雰囲気が漂っていた。

腕に抱かれた子は生後4ヵ月位だろうか。

すやすやと眠るその姿は無条件に愛らしかった。

女はその子を夫にあずけると、

I've heard about you many times. I've wanted to see you so much.

I met him in America about three years ago ・・・・・

と何やら英語で話始めたが、何をいっているのかさっぱりわからなかった。

しばらくの間、女は一方的に話した後、

See you next time.

と言って、子供を夫から引き受けて、ジャガーに乗り込みその場を去っていった。

去り行く車を見送りながら、夫は私に、

「彼女と、子供を愛してやってくれないか」

とぽつりと言った。